なぜわたしが1節の、「とき」という訳語についてこだわるのか、と言いますと、「とき」という訳語が使われていることによって、1節では、イエスが、生まれたばかりのときのことについて書かれているかのように思えるからです。
ところが、1節で書かれていることは、イエスが、生まれたばかりのときのことではない、と言えるのです。それについて、説明したいと思います。
まず、2章2節から7節までに、次のように書かれています。
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2節
「ユダヤ人の王としてお生まれになった方はどこにおいでになりますか。私たちは、東のほうでその方の星を見たので、拝みにまいりました。」
3節
4節
そこで、王は、民の祭司長たち、学者たちをみな集めて、キリストはどこで生まれるのかと問いただした。
5節
6節
7節
そこで、ヘロデはひそかに博士たちを呼んで、彼らから星の出現の時間を突き止めた。
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7節に、「ヘロデはひそかに博士たちを呼んで、彼らから星の出現の時間を突き止めた。」とあります。「博士たち」というのは、もちろん、1節の「東方の博士たち」のことです。
4節から6節までの話から、ヘロデは、キリストがどこで生まれるのかについては知ることができた、と言うことができます。しかし、いつ生まれるのかについては知らなかったのです。
ヘロデが「星の出現の時間を突き止め」ようとしたのは、いつ生まれるのかを知るためだったのではないか、と思われます。
なぜ、いつ生まれるのかを知ろうとしたのでしょうか。それは、「ユダヤ人の王としてお生まれになった方」を殺そうとしたからではないか、そして、殺すためには、その方が生まれてからどれくらい経つのかを知らなければならなかったからではないでしょうか。
13節に、「ヘロデがこの幼子を捜し出して殺そうとしています。」とあります。このことから、ヘロデは「ユダヤ人の王としてお生まれになった方」を殺そうとしていたことが分かります。
しかし、どんな子を殺さなければならないかは分かりません。そこでヘロデは、8節で、「行って幼子のことを詳しく調べ、わかったら知らせてもらいたい。私も行って拝むから。」と言ったのだと思います。「幼子のことを詳しく調べ、・・・知らせてもら」ったら、殺すべき子がどんな子であるかが分かります。
ヘロデは、「星の出現の時間を突き止めた」ので、その子が「幼子」であることは分かりました。8節に、「幼子のことを詳しく調べ、・・・」とあるように、ヘロデは、「幼子」という言葉を使っています。
しかし、それ以外の詳しいことは分からなかったので、「行って幼子のことを詳しく調べ、わかったら知らせてもらいたい。」と言ったのだと考えられます。
詳しいことを知りたかったので、ヘロデは、東方の博士たちが戻って来るのを待っていた、と言うことができるかと思います。
しかし、東方の博士たちは戻って来ませんでした。12節に、「夢でヘロデのところへ戻るなという戒めを受けたので、別の道から自分の国へ帰って行った。」とあります。
東方の博士たちが戻って来なかったので、ヘロデは、殺すべき幼子がどんな子であるのかを知ることができなくなりました。
それでどうしたかと言うと、16節に、次のように書かれています。
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16節
その後(のち)、ヘロデは、博士たちにだまされたことがわかると、非常におこって、人をやって、ベツレヘムとその近辺の二歳以下の男の子をひとり残らず殺させた。その年令は博士たちから突き止めておいた時間から割り出したのである。
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1行目に、「だまされた」という言葉があることから、東方の博士たちは、戻って来ることをヘロデに約束していたのではないか、と思われます。戻って来ることを約束していたのに、戻って来なかったので、「だまされた」ということになるのではないか、と思われます。
「だまされ」て、「非常におこって、」ヘロデはどうしたかと言うと、「人をやって、ベツレヘムとその近辺の二歳以下の男の子をひとり残らず殺させた」のです。
「ベツレヘムとその近辺」とあります。「その近辺」という言葉から、ヘロデは、幼子が「ベツレヘム」にいるかどうか、分からない状況にあった、ということが推測できます。「ベツレヘム」にいるということが、確かなものであったら、「その近辺」の子供まで殺させることはないからです。
16節の終わりに、「その年令は博士たちから突き止めておいた時間から割り出したのである。」とあります。「その年令」とは、「二歳」です。「博士たちから突き止めておいた時間」というのは、7節の「星の出現の時間」と考えられます。7節に、「星の出現の時間を突き止めた。」とあります。
言い換えると、二歳という年令は、星の出現の時間から割り出した、となります。