前回は、⑤から⑩までを、「王国」という訳語を用いて訳すと、次のようになるという
ところまで、見ました。
「わたしの父はわたしに王国を譲った・委任した」
これに、④を加えると、このようになります。
「(ちょうど)わたしの父がわたしに王国を譲った・委任したように」
そして、①から⑩まで全体を訳すと、このようになります。
「そして・しかしわたしは、ちょうどわたしの父がわたしに王国を譲った・委任したよ
うに、あなた方に譲る・委任する」
「そして・しかし」の部分を、「新世界訳」で見ると、「それで」となっているので、「そ
して」を採用して、また、「譲った・委任した」「譲る・委任する」の部分を、仮に、「委
任した」「委任する」という訳語を用いて、もう一度訳すと、こうなります。
「そしてわたしは、ちょうどわたしの父がわたしに王国を委任したように、あなた方
に委任する」
この中の、「委任した」は、「過去」で、「委任する」は、「現在」です。そして、「新世
界訳」では、こうなっています。
「それでわたしは,ちょうどわたしの父がわたしと契約を結ばれたように,あなた方と
王国のための契約を結び,」
「わたしに王国を委任した」の部分が、「わたしと契約を結ばれた」となっており、
「あなた方に委任する」の部分が、「あなた方と王国のための契約を結び」となっ
ています。
原文に、「契約」という名詞があれば、「διατίθεμαι」(ディア
ティッセマイ)や「διέθετό」(ディエッセト)は、「結ぶ」「結んだ」と
いう訳が可能なようなのですが、原文に「契約」という名詞がないので、「結ぶ」
「結んだ」ではなく、「委任する」「委任した」というような訳語が適切かと思います。
つづく。